イネのフィトアレキシンとして知られる化合物

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フィトアレキシンの広く受け入れられている定義は「植物が病原菌の感染を受けたときに新たに生合成して蓄積する低分子抗菌性物質」です.したがって,病原菌未感染の健全な植物体に蓄積している抗菌性物質や抗菌活性を持つ高分子(一部の PR-タンパク質など)は含まれません.しかし,どの物質をフィトアレキシンとするかの線引きは曖昧な部分もあります.ここでは,このページの作成者(長谷川)がフィトアレキシンの定義に合致すると判断した化合物を紹介します.

各化合物の詳細については,随時情報を更新予定です.

ラブダン関連ジテルペノイド

モミラクトン A (Momilactone A)

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  • 単離・同定・構造解析
    • イネ籾殻に含まれる植物成長阻害物質として単離(200 kg の乾燥籾殻から約 150 mg)され,MS, NMR,X 線結晶構造解析などによって構造決定された(Kato et al. 1973; Kato et al. 1977).
    • 植物抵抗性誘導剤候補化合物 WL-28325 処理されたイネ葉でいもち病菌接種後に蓄積する抗菌性化合物として同定された(Cartwright et al. 1977; Cartwright et al. 1981).

モミラクトン B (Momilactone B)

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  • 単離・同定・構造解析
    • イネ籾殻に含まれる植物成長阻害物質として単離(200 kg の乾燥籾殻から約 100 mg)され,MS, NMR などによって構造決定された(Kato et al. 1973; Kato et al. 1977).
    • 植物抵抗性誘導剤候補化合物 WL-28325 処理されたイネ葉でいもち病菌接種後に蓄積する抗菌性化合物として同定された(Cartwright et al. 1977; Cartwright et al. 1981).

オリザレキシン A (Oryzalexin A)

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オリザレキシン B (Oryzalexin B)

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  • 単離・同定・構造解析

オリザレキシン C (Oryzalexin C)

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  • 単離・同定・構造解析

オリザレキシン D (Oryzalexin D)

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  • 単離・同定・構造解析
    • いもち病罹病イネ葉から抗菌活性物質として単離(罹病葉 50 kg の病斑部 1 kg から 0.3 mg)され,化学合成によって得られていた物質との NMR スペクトルの比較によって構造決定された(Mori & Waku 1985; Sekido et al. 1986).

オリザレキシン E (Oryzalexin E)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紫外線照射イネ葉から単離(2.4 kg から 12 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.さらに,イネいもち病菌に対する抗菌活性を有し,いもち病菌接種したイネ葉に蓄積することも確認された(Kato et al. 1993).

オリザレキシン F (Oryzalexin F)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紫外線照射イネ葉から単離(3.4 kg から 8 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.さらに,イネいもち病菌に対する抗菌活性を有し,いもち病菌接種したイネ葉に蓄積することも確認された(Kato et al. 1994).

オリザレキシン S (Oryzalexin S)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紫外線照射イネ葉から単離(200 g から 10.9 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.さらに,イネいもち病菌に対する抗菌活性を有し,いもち病菌接種したイネ葉に蓄積することも確認された(Kodama et al. 1992; Tamogami et al. 1993).

ファイトカサン A (Phytocassane A)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紋枯病菌接種イネ葉鞘から抗菌活性物質として単離(2.0 kg から 28 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.(Koga et al. 1994).
    • 誘導体の化学合成および CD スペクトルにより絶対立体配置が決定された(Yajima & Mori 2000).

ファイトカサン B (Phytocassane B)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紋枯病菌接種イネ葉鞘から抗菌活性物質として単離(2.0 kg から 16 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.(Koga et al. 1994).
    • 誘導体の化学合成および CD スペクトルにより絶対立体配置が決定された(Yajima & Mori 2000).

ファイトカサン C (Phytocassane C)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紋枯病菌接種イネ葉鞘から抗菌活性物質として単離(2.0 kg から 3 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.(Koga et al. 1994).
    • 誘導体の化学合成および CD スペクトルにより絶対立体配置が決定された(Yajima & Mori 2000).

ファイトカサン D (Phytocassane D)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紋枯病菌接種イネ葉鞘から抗菌活性物質として単離(2.0 kg から 9 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.(Koga et al. 1994).
    • 誘導体の化学合成および CD スペクトルにより絶対立体配置が決定された(Yajima & Mori 2000).

ファイトカサン E (Phytocassane E)

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  • 単離・同定・構造解析
    • ジャガイモ疫病菌菌糸抽出物で処理されたイネ懸濁培養細胞から単離され,MS, NMR などで構造決定された.さらに,イネいもち病菌に対する抗菌活性を有し,いもち病菌や紋枯病菌を接種したイネ葉に蓄積することも確認された(Koga et al. 1997).
    • 誘導体の化学合成および CD スペクトルにより絶対立体配置が決定された(Yajima & Mori 2000).

ファイトカサン F (Phytocassane F)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紫外線照射イネ葉から単離(400 g から 1.9 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.さらに,イネいもち病菌に対する抗菌活性を有し,いもち病菌を接種したイネ葉に蓄積することも確認された(Horie et al. 2015).

ファイトカサン G (Phytocassane G)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紫外線照射イネ葉(品種 Basilanon)から単離(295 g から 3.7 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.さらに,イネいもち病菌に対する抗菌活性を有し,いもち病菌を接種したイネ葉に蓄積することも確認された(Kariya et al. 2020).

オリザラクトン (Oryzalactone)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紫外線照射イネ葉(品種 Jaguary)から単離(350 g から 3.3 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.さらに,イネいもち病菌に対する抗菌活性を有し,いもち病菌を接種したイネ葉に蓄積することも確認された(Kariya et al. 2020).

カスバン型ジテルペノイド

ent-10-オキソデプレッシン (ent-10-Oxodepressin)

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  • 単離・同定・構造解析
    • 紫外線照射イネ葉から単離(400 g から 2.1 mg)され,MS, NMR などで構造決定された.さらに,イネいもち病菌に対する抗菌活性を有し,いもち病菌を接種したイネ葉に蓄積することも確認された(Inoue et al. 2013).

フラバノン

サクラネチン (Sakuranetin)

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  • 単離・同定・構造解析
    • ソメイヨシノ樹皮に含まれる配糖体サクラネチンのアグリコンとして単離され,元素分析,化学的分解による既知物質への誘導などによって構造解析された(朝比奈 1908; Asahina 1908; 朝比奈ら 1927).
    • 紫外線照射イネ葉から抗菌活性物質として単離(50 g から 10 mg)され,NMR スペクトルがサクラネチンと一致した.さらに,イネいもち病菌を接種したイネ葉に蓄積することも確認された(Kodama et al. 1992).

ナリンゲニン (Naringenin)

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  • 単離・同定・構造解析(初期のドイツ語の文献については読み込み・調査不足なので,情報が不正確かもしれません)
    • 柑橘類に含まれる配糖体ナリンジンのアグリコンとして単離され,元素分析,化学的分解による吉物質への誘導,紫外線分光法などによって構造解析された(Will 1885; Will 1887; Sonn 1913; Asahina & Inubuse 1928; 朝比奈ら 1928).
    • 紫外線照射イネ葉からも同定されたが,イネいもち病菌に対する抗菌活性はサクラネチンに比べて著しく弱いことから,フィトアレキシンというよりもサクラネチンの生合成前駆体と考えられていた.しかし,イネ白葉枯病菌などの病原細菌に対する抗菌活性を持ち,細菌に対してはサクラネチンよりも高い抗菌活性を示すことが報告され,病原細菌に対してはフィトアレキシンとしてはたらいていることが示された(Dillon et al. 1997; Padmavati et al. 1997; Murata et al. 2020).

フェニルアミド

N-ベンゾイルトリプタミン (N-Benzoyltryptamine)

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  • 単離・同定・構造解析
    • ニューカレドニア島原産のミカン科低木 Myrtopsis myrtoidea から単離され,NMR, MS,化学合成(天然物の発見より前に合成されていた)などによって構造解析された(Hifnawy et al. 1977
    • 紫外線照射イネ葉に含まれる抗菌活性化合物として同定され,後にイネいもち病菌の感染によっても蓄積が誘導されることが確認された(Park et al. 2014; Horie et al. 2016

N-シンナモイルトリプタミン (N-Cinnamoyltryptamine)

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N-ベンゾイルセロトニン (N-Benzoylserotonin)

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N-シンナモイルセロトニン (N-Cinnamoylserotonin)

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N-p-クマロイルセロトニン (N-p-Coumaroylserotonin)

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N-フェルロイルセロトニン (N-Feruloylserotonin)

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N-ベンゾイルチラミン (N-Benzoyltyramine)

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N-シンナモイルチラミン (N-Cinnamoyltyramine)

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